まえがき

「死にたい」は、「生きたい」の裏返しである──

拙著『人間のしくみ』と『幸せのしくみ』をお読みになった方々から寄せられるさまざまな悩みにふれ、私はそんな確信を持つようになりました。

1998年に増加した自殺者の多くは40〜60代の中高年の男性で、現在でもこの年代の男性が全体の3分の1を占める状況が続いているといいますが、人口10万人あたりの自殺者数は高齢者も非常に多く、また10代〜30代の死亡原因の第1位が自殺であると報じられ、最近では女性の自殺率も上昇しているといいます。

近年では著名人の自殺も相次いで報道され、それに触発されたかのごとく後追い自殺と思われる事態が起きました。スポットライトを浴びて華やかな世界に生き、何不自由ない暮らしをしているかに見えても一人でひっそりと命を絶つ道を選んだ訃報に際しては、世間が抱く喪失感と無念にも計り知れないものがあります。

確かなことは、ある日突然衝動的に死ぬことを思いつくのではなく、多くは複合的な悩みや課題が連鎖する中で、「もう生きられない」「死ぬしかない」と追い込まれた末に亡くなっているのだということ。ましてやこの激動の時代にかつてない閉塞感が漂うなか、多くの人にとって、今ほど生きがいや生きる意味、まさにその価値が急速に失われていっている時代もないと言えます。

学校や職場、家庭で、休まずに真面目に、一生懸命に頑張っているのに生きる意味を見失っているのであれば、それは、「どうして人間として生まれてきたのか」、「なぜ、その家の子どもに生まれてきたのか」、そして「いったい自分には何の役割があるというのか」というごく素朴な問いに対して明確に答えてくれるところが世の中のどこにもなかったことによるでしょう。

幸いに自殺とは縁がなくとも、人間は、いつかは死を迎えることを誰もが知っています。その先が見えない「死」というものには大方の人が不安を感じているもの。

日本は世界的に見て長寿国ですが、ガンや脳溢血等で亡くなる方が増えているので、現在72歳の私よりも若い年齢で身内の死と向き合った方は多いと思います。多くの人がポックリ死を理想だと考え、その理由に「家族に迷惑をかけたくない」、「苦しみたくない」などがあげられています。意識調査では、死に対するイメージは「怖い」「悲しい」「つらい」などのマイナスイメージで、避けられないとはいうものの心の準備をしてから死を迎えたいと考えている方が多いようです。

また3人に1人がガンで亡くなる我が国では、ホスピスケアの中で、死への恐怖をいかに小さくするかにも力が注がれています。

「あの世」(天国)というと、テレビや映画の物語の中で、亡くなった人が一面に広がるお花畑にたたずんでいる場面を連想したり、三途の川を渡ってしまうとこの世に戻ってこられないと小説で読んだりして、なんとなくそんな場所だとイメージしている人も多いでしょう。

私のもつ「死」のイメージは、それとはほど遠いものでした。小学校の遠足のときにお寺で見た地獄絵図が私の幼い心に入り込み、死ぬと地獄に行くという恐怖心がいつまでも抜けず、以来、なぜ人間は生まれ死ぬのかと思い詰める日々が続き、死への恐怖を抱き続けていた記憶があります。

日常を生きる誰しもが、

「いいことなんて一つもないのに、なぜ私は生きているのか」

「どうせ死ぬことがわかっているのに、どうしてこんなに必死になって生きなきゃならないんだ」

そんな思いに駆られたことが一度や二度はあるに違いありません。しかしそれは、裏を返せば「もっと生きがいを感じたい」「生きることの意味を見出したい」という心の渇きでもあるのです。

しかし、その心の渇きは、哲学書や宗教の本を読んで真理を求めてみても癒えることはなく、不安から逃れようとしても本当に知りたいことはどこにも書かれていません。

ここに、私が長年抱き続けてきた死への不安を根底からぬぐい去ってくれた「生と死のしくみ」と、その「しくみ」に従って生きる私たちがいかにして真の生きがいと幸福感を持って生きていけばいいのかを、皆さんにもお教えします。

本書を手にしたあなたと、あなたの大切な人が真に生きる意味を見出して、ここから輝ける「今」をつかみ取っていただきたい一心で本書を著しました。

あなたには、まだあなたが気づいていない素晴らしいエネルギーが確かに眠っているということだけを断言し、その具体的な内容を本編に譲ります。