◇2.生まれ変わりの法則

今を生き、前世によらず

この世に生まれ変わった後、人は与えられた環境のもとで、前世までの業を清算しなければなりません。清算といっても、前世で人を苦しめれば現世では逆に苦しめられるといったような「目には目を」式の因果応報ではありません。そのような特別なことではなく、個々に与えられた環境のなかでよろこびを源かせるという一事であるのです。

貧苦のなかに生まれた人は、その貧苦自体が清算しなければならない業であり、その清算の方法は「貧苦でもよろこべる自分に成る」ことです。身体にハンディをもって生まれた人は、そのなかでよろこびをかせることが清算です。すなわち、その人の生まれた環境や状態のすべてが、その人が現世において人間完成を達成するための大切な道具ということです。今ある自分をありのままに受け入れ、当たり前に日常のよろこびを感受できれば、それは意識せずとも清算されるものであるということです。

それゆえ、私たちは前世のことを苦に病む必要はないのです。ただこの今の生を最大限に大切に生きれば、他になにも心配する必要はありません。

私たちのほとんどは前世の記憶を持って生まれてきません。ということは、その記憶が現世において不要であるということに違いなく、意識する必要のないものであるのです。それはひとえに、現世での人間完成は白紙で始められる必要があるということにほかなりません。

ですから、前世に必要以上に興味を持つこともありません。天があえて知らせる必要なしと判断したものを無理やり暴くことは不自然なことです。前世の記憶が人間完成に必要であれば、私たちはみな前世を憶えて生まれてくるはずです。

何よりも大切なことは、「今を生きる」ことです。

昨今の神秘思想のブームが高じてか、輪廻転生にこだわって、それに振り回される人も少なくありませんが、人は、輪廻転生を繰り返すために生きているのではありません。輪廻転生から解放される(卒業する)ために今を生きているというのが事実なのです。