「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例えなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし……」
無常観を淡々とつづる『方丈記』の一節です。
河の水は一瞬たりともとどまることなく、ただ流れていきます。同様に万物はすべて流転する定めにあります。森羅万象、すべてに例外はありません。
けれども、注意深く観察してみると、そこにある方向性、秩序というべきものが存在していることに私たちは気づくはずです。河の水は決して自分勝手に流れているわけではありません。水は高きから低きへ流れます。そうした平明な秩序のもとに一定の方向性を保っているのです。
では、万物はいかなる秩序のもとに流転しているのでしょうか。
太陽の日の出と日没、月の満ち欠け、四季のうつろい、それらに共通していることは、あたかも輪を描くように循環を繰り返しているということです。花は枯れても翌年にはまた咲き誇ります。生けるものが死を迎えて大地に倒れ土にかえると、その土からふたたび他の生命が生まれます。
すべてはそのサイクルのなかにあるのです。