◇10.人間完成の道

人間の3つの使命

人はこの世に誕生するとき、母胎のなかで十月十日かけて父方、母方の5代前からの生きざま、死にざまを受け継いで生まれます。これは遺伝子の組み合わせという視点からもうなずけると思います。そして2本足で立ち、人生を歩み始めたその人にとって、先祖からの血液、遺伝子の状態というものがすでに人生の5割方を決めてしまうほどの力を持っています。

顔が似ている、声が似ているといった目に見える部分のものから、目には見えない領域まで、実に多くのものを先祖から引き継ぎ、無意識に先祖そのものの姿を表現して生きているのです。

では、その人はなぜその家に生まれたのか。両親との出会い、与えられた環境などは決して自分で選択することができないのは確かなことです。そのとき、その家の子として生まれてくる必要があったからこそ、今ここに存在しているのがそれぞれの人間生命体といえます。

人間はこの世に誕生したときから歩む道は定まっています。ある子どもは五体満足から始まり、ある子どもは手足が不自由な状態から始まります。これは平等でも不平等でもなくあたりまえのことなのです。人生が始まるときは、必要な家との出会い、肉体との出会いがあります。

私が生まれた家は、子どもの頃貧しかったので、近所の友だちの家に自転車やテレビがあることが羨ましく、その友だちの家の子どもだったらどれほどうれしいだろうと思った時期がありました。でも、今では、この両親の子としてこの家に生まれたおかげで、天と出会い、頭を取って人間完成の道を歩ませてもらえていることに、心から感謝しています。

人は、この世に生まれたならば一人残らず死に向かって歩んでいます。今、生きているのは死を仕上げるためであり、生から死までの道のりを必要としたからなのです。だから、必要な家に出会い、必要な親子の出会いから人生は始まっているのです。

そして、その家に生まれた以上、人生のなかで果たすべき3つの目的があります。

〈1〉出会った家を受け継いだ以上、その家を根こそぎ救う
〈2〉人間生命体としての自分を、人間完成させる
〈3〉子孫・人類の繁栄につなげる

これら3つの目的を果たすことで人生を仕上げ、人間完成したよろこびの死にざまが、子々孫々、そして人類へと受け継がれていくのが人生の目的なのです。

人間生命体を完成させるということは、単に自分が救われるということにとどまらず、自分の先祖を含めて家を救うということであり、子孫・人類を救うことにつながります。

目には見えませんが、死後の世界は天空かなたにあるのでも地下深くにあるのでもありません。死後の世界とは、私たち人間が生きているこの世界にあるのです。人間の目には見えませんが、この宇宙空間にはさまざまな世界がいくつも重なりあって存在しています。人間にとっての死後の世界も、この空間にあります。従って、5代前の先祖もこの同じ空間にいて、私たちのよろこびは5代前の先祖まで伝わります。

この3つの目的があるにもかかわらず、多くの人間は、地上に肉体を持って再生を繰り返しているうちに、大自然の法則の存在を忘れてしまったのです。目に見えるこの3次元の世界こそ本当の住家であるように錯覚してしまったのが私たちの今の姿なのです。天上界へのパスポートを手に入れるには、「今」この地上に肉体があるうちに、「おもい」を使って勝負するしかないのです。

プラスのおもいをかせつづけ、「最高の今」を刻んでいるかどうか、それがすべてなのです。

あなたの中には、あなたが変化を起こすために、また、仕事や人間関係、そして人生においてチャンスをつかむために必要な、すべての勇気が備わっています。もし、今が苦の絶頂ならば今がチャンスです。大自然の法則に沿った生活をし、今までの人生を無駄にせず、これからの人生を本物にできるかの分岐点なのです。