◇2章 生命力を発揮させない頭

4.人間だけが生命を輝かせていない

私たち人間は、優秀な頭脳を持っているがゆえに、その頭脳を過信して、自然界の生命体の中で唯一、自然界を外れてしまいました。
つまり、自然界のルールである「自然の法則」を無視してきたのです。
そして、本来、自然の法則に沿って、すべての自然と共生して生きていくべきなのに、自らの力で幸福になれると勘違いして、不自然な生き方を選んできたのです。その結果が「悩み」という逃れられない産物を生んだのです。
他の生命体、たとえば海の中で泳いでいる魚は、悩んでいるでしょうか。他の魚より泳ぎ方が下手だと劣等感を抱いている魚がいるでしょうか。
「私だけ尻尾が黒いので、他の魚に対して恥ずかしい」
「明日もエサが取れるか心配だ」
といったことを考えながら泳いでいる魚がいるでしょうか。
このようなことを考えて悩むのは、人間だけなのです。
魚は、自らに与えられた生命を、ただ純粋に生きているだけです。そして、子孫繁栄という与えられた使命を、ただ果たしているだけなのです。
海の中に潜って魚を見る機会があれば、そして、その魚と目が合うことがあれば、じっと見つめてみてください。その毅然とした目を見て、おそらくあなたは「負けました」と思うかもしれません。
このような笑い話に属する話に、お腹の底から笑えないのだとしたら、そこにも人間の悩みの深さが見て取れます。
私たちは、自然との調和の中で、宇宙のエネルギーによって生かされている存在です。そして、自然と一体になっているときに、その生命が最も輝くように創られているのです。
「何ものにもとらわれず、自然体で生きよう」
この「自然体」という言葉には、あなたが想像する以上に深い意味があります。こだわらず、無理をせず、過去を引きずらず、他のせいにせず、すべてのものを受け入れて「ただ自然体で生きる」こと。釈迦が唱えた「悟りの境地」とは、このような生き方を指します。
人間は悩むために生きているのではありません。もともと、そのようには創られていないのです。それが、悩める人間ばかりになったのは不自然であり、そもそも、おかしなことなのです。
人は、悩みがあると、その悩みを解消しようと、いろいろな努力を試みます。とにかく、いま直面している悩みそのものを何とかしようと懸命になるのです。
しかし、肝心の本人が自然の法則から外れた生き方をしている限り、悩みは解決しません。
本当に悩みを解決するには、どうすればよいのか。もう、あなたはお分かりだろうと思います。