人間はなぜ生まれてきたのか。
人生の壁にぶち当たると、決まって人はこんなことを考えます。
永い永い歴史を通じて人類がこれほど求め続けてきたこの問いにも、天は明解に答えを示します。
「死ぬと何もかも無くなってしまう」と人は死を怖れますが、この宇宙がなくならないかぎり、人間は死んでも生命体(魂)は消滅することはありません。それどころか、宇宙の存在は私たち人間の人生80年の長さからすると永遠ですから、生命体(魂)は永遠に存在するということです。
人間も含めて、花として昆虫として動物として、地球上の生物が各々の生涯をかけてやらなければならないことは、ただひとつ。
それは、与えられた環境の中で、生命体として完成することです。
たとえば1本の樹木は、葉を茂らせ光合成を行うことで、動物たちが生きていくうえで欠かすことのできない酸素を吐き出します。昆虫や小動物、鳥を中心に、樹木の周りには生態系が生まれ、多くの生物を養います。秋には実をつけ、それが動物たちの生きる糧となります。そんな毎日を繰り返し、やがてときが来れば枯れ果て、樹木としての生を終えます。
樹木にとっての生命体の完成とは、この役割をありのままに100パーセント表現することにあるのです。そのとき生命体に残るのは「喜び」だけです。
万物の霊長たる人間の役割は、秩序と調和の中で万物を喜びに満たすことです。
他の生物が、生命体として完成を遂げられるように助け、地球を喜びの波動で包みこむことです。人間に喜びが満たされれば、あらゆる生物の霊性は一気に高まります。それぞれの命をまっとうする間に生命体を完成させ、無事進化を遂げることができるようになります。
各々がありのままの姿を表現し、喜びの中に生きるのであれば、地球はまさに天国となり、地球そのものが進化を遂げるのです。
まさに、「地球環境は人間環境」なのです。
それは、人間が喜びのうちに生活を送っていると、すべての生態系を喜びで満たし、秩序と調和を地球に与えるということです。
逆に、人間が苦悩の日々を送っていると、地球に天災や人災を引き寄せるということです。「人間が悩んでいることぐらいで……」と思われるかもしれませんが、万物の霊長である人間生命体の影響はそれほどに大きいのです。
だからこそ、すべての生命体が進化を遂げられるために、大宇宙の創造主である天は、人間が一生をかけてただ喜びを表現することを願っています。
しかし、人生には苦があふれています。誘惑や煩悩の罠は、隙があれば私たちの足を引っぱろうと、至るところにひそんでいます。見方によっては四面楚歌とも思えるこの状況の中で「さあ喜びを表現してみなさい」と天は私たちに語りかけています。「あなたは人間として喜びあふれた毎日を繰り返しているのですか」と問いかけているのです。
毎日に感謝し、幸福に満たされているとき、喜びは表現されたことになります。はたから見れば問題ごとと思えることであっても、それが気にならずむしろ感謝がこみ上げてくる、つまり問題を問題としない人生を歩めたとき、私たちは初めて喜びの表現体となり、人間完成を成し遂げたと言えるのです。
ところが病苦に悩み、経済苦にあえぎ、孤独感にさいなまれ、幸福とは縁遠い生活を送っているならば、厳しい言い方ですが本来の人間としての役割を十分に果たしていないことになります。かつての私がそうであったように……。
そして、人間完成が成し遂げられるまで人間として生まれ変わる輪廻は、永遠に続くのです。
そうです。人間が80年という人生を与えられ心臓を動かされているのは、人間という生命体(魂)を進化させるという目的があるからであって、人間としてこの地上に生かされているときにだけ、その進化は可能となるのです。なぜなら、私たち人間の生命は、人の喜びがわが喜びとなることで、初めて自分の生命を輝かせることができ、人間として喜びの人生を生きることができるからです。
ビッグバンから137億年経た今日もなお、宇宙は進化を続けています。人間もまた、宇宙との調和を図りながら「人間の繁栄」という進化を遂げていかなければなりません。もっともっと喜んで、生命を輝かせなければなりません。人間は宇宙の一員であり、天の設計図に沿って役割を担う存在だからです。
最後に、私自身、天の教えに沿いながら日々を歩ませていただいていますが、毎日が喜びの連続です。天声というのはときとして実に壮大であるため当初は意味が分からなかったりするものですが、のちに自らを振り返ることで必ずその意味が分かるときが訪れます。それにより、さらに大きな喜びをかみしめることができます。
私の体験から会得してきた、天地の間に存在する目に見えない大自然の法則をお伝えしたこの拙著を手にされた方が、自然と問題を解決し、ご自身に内在する限りない力に目覚め、喜びいっぱいの人生に向かってその第一歩を踏み出す力になれば幸いです。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
天はいつも、あなたとともにあります。
(完)