7、生かされていることに感謝せずして

私たち人間は生かされています。このことに気づくことは、とても大切なことです。なぜなら、そこから感謝の気持ちが生まれるからです。

現代に生きる人々は、この感謝の気持ちを忘れがちになっています。現代社会が殺伐として、人々の心がすさんでいると言われるのも、それがひとつの原因になっています。
感謝の気持ちがなくなると、人間は傲慢ごうまんになります。与えられた生命力を無視したまま、頭の知識や能力で人生を築いていけるという過信を招きます。そこから、人生の間違いが生じてくるのです。
私たち人間は、独力で生きていくことはできません。生命すら維持していくことができないのです。

子どもの頃、食事の最中にお母さんやおばあちゃんから、「ごはんを一粒残さず食べなさい」と叱られた記憶はありませんか。
昔の人は、「お米は、お天道さまから頂いたものです。そして、お百姓さんが精を出して作ったものだから粗末にしてはいけません。一粒でも感謝して頂きなさい」ということを子どもたちに言い聞かせていました。
飽食の時代と言われる今日、食べ物に感謝の気持ちを抱く人が、はたしてどれだけいるでしょうか。

私たち人間は、外からエネルギーを取り入れなければ生きていくことはできません。そのエネルギーを、私たちは、食物だけでなく空気、水、太陽光といった自然界に存在するものから得ています。
目に見えないために、すぐには信じがたいかもしれませんが、この宇宙空間には生命活性エネルギーが充満しています。生きとし生けるものすべてに平等に降り注ぐこの力は、体内の細胞をフルに活性化させ、人間が本来持っている能力を最大限に引き出すことができる、まさに生命の源とも言えるものです。私たちは自分でも知らぬうちに、自然にこのエネルギーを受け、吸収しているのです。

人間がいきいきと幸福に生きるために必要なもの、これこそが「天行力てんぎょうりき」と呼ばれるエネルギーなのです。

私たちは天行力によって生命を維持し、活動を維持していると言えるのです。そして忘れてはならないことは、私たち人間も含め、地球の全生物は天行力によって誕生しているということです。
宇宙の始まりから人間の誕生までの一連の経緯を、科学者アインシュタインは、「人間という生命体を含む宇宙の誕生と進化は、偶然ではあり得なく、ある大いなる意志(天)による綿密な設計図に沿って行われたことなのだ」と、科学者としてはかなり思い切った表現で述べています。
今日でも、多くの科学者たちが「人間はなぜ生まれたのか」という疑問を解くために研究を進めていますが、研究を進めれば進めるほど「人間が偶然に誕生したと考えるには、あまりにも無理がある。計算された結果として、割り出されたとしか考えられない」という結論に近づいているようです。
いずれ科学で解明される日が来るかもしれませんが、その結論を待つまでもなく、私たち人間は決して偶然に生まれたのではなく、科学者たちが「ある大いなる意志」と呼ぶ存在、つまり「天」の意志によってこの地球上に誕生した生命体であることは間違いのない真実なのです。

天行力によって人間を誕生させた天は、天行力をさまざまな形に変えて大自然を創りました。つまり、人間に生命を与えると同時に、その生命を生かすために必要なエネルギーを、自然の中に用意したのです。
そこには、天の計り知れない大いなる意志が存在しており、人間に対する愛がこめられています。
そのことを忘れて、人間が単独で生きていると錯覚するのは傲慢以外の何物でもありません。その傲慢さが今日の天災や人災を引き起こして、自分たちの生命を自ら脅(おびや)かす結果を招いてしまったのです。そればかりではありません。一人で生きているという錯覚が「我欲」を生み、人間どうしの間で争いといったさまざまな問題を起こさせる要因になっていったのです。本来は喜べるはずの私たちがその錯覚から「喜べなくなった」ことから生じた現象です。
私たちを生かしてくれるすべてのものに対する感謝を忘れてしまったがゆえのことなのです。