私の今があるのは、両親のおかげです。
父は、12年前に脳梗塞で倒れました。意識を取り戻すことなく話をすることもできませんでしたが、手を握ると強く握り返してきて放そうとしませんでした。「家のことはお前に任せたよ」と言っているようでした。3ヶ月後のお盆を迎えた日、78歳の誕生日を前にして旅立ちました。
き帳面で多趣味だった父
父は、若い時、剣道で身を立てようと思っていたそうですが、戦争で召集され果たせぬ夢となったようです。それでも小・中学校で事務を執りながら定年で退職するまで子どもたちに剣道を教えていました。父は字(毛筆)がうまく、よく頼まれて書き物をしていました。他にも囲碁、水墨画、漢詩、俳句といろいろな趣味を持っていました。また本を読むのが好きで母に小言をいわれながらも次から次へと本を買い込んでいました。き帳面な性格で家の掃除、庭掃き、草取りなどを欠かさずにやっていました。公共の場所ではスリッパを黙々とそろえているのをよく目にしました。
しかしながら、私は、そうした父の良い所を受け継ぐことはありませんでした。子どものころの私にとって、父は、すぐにげんこつが飛んでくる厳格でこわい存在でした。
明るく料理も上手な母
母は、今年87歳になります。昔から丈夫で大きな病気をしたことがありません。風邪もひいたことがないくらいです。昼寝しているのも見たことがありません。明るい性格で人に優しく誰にでも気軽に話しかけ、すぐに打ち解けてしまいます。料理も上手でいつも孫に「おばあちゃん、あれ作って、これ作って」とせがまれます。ことに母の作るまん頭はみんなに喜ばれています。
幼いころの私は、いつもそんな母にまとわりついていました。父も母も働き者で、暗くなるまで畑や田んぼで仕事をすることもたびたびありました。秋のとり入れ時は兄弟3人で朝から晩まで手伝いをしました。大変でしたが家族5人一緒ということもあり、お茶を飲みながら楽しいひと時でもありました。
行き詰まって山小屋にいたとき、自然の法則に出会い
私が自然の法則と出会ったのは、南アルプスのある山小屋にいたときでした。仕事や人間関係で行き詰まってしまって、その小屋を手伝っていたのですが、そこに置いてあった1冊の本を手にしたのをきっかけに、問題の原因である「頭」を取らせていただきました。行き詰まっていた自分はなく、問題を問題とせず、肚の底から最高のおもいが込み上げてきてうれしくてたまりませんでした。
両親も「頭」を取ってくれて、そのときの笑顔いっぱいの顔とよろこびあふれた姿は、今でも忘れません。
一緒に三法行をやる人も現れて
その後、私は家流れているものも変えることができ、一歩一歩前進していく中で、私のやっている三法行(さんぽうぎょう)をやってみたいと言う人も現れ、楽しく実践を繰り返しています。
今、両親の魂も私と一緒に喜んで歩んでくれているのがわかります。
私は、仕事や人間関係にも最高に恵まれています。
この場を借りて、改めて両親に感謝の気持ちを伝えたいと思います。
「とうちゃん、かあちゃん、生んでくれて育ててくれて本当にありがとう。二人がいてくれて、私は自然の法則をつかさどる天に出会えました。とうちゃんがいつもやっていた掃除をお手本にしてこれからやらせてもらいます。かあちゃんのように、誰にでも優しく接していきます。かあちゃん、いつまでも元気で長生きしてください。これからも一緒に歩んでいきましょう」