人間としての魅力の中で、一番大切なものであり、それでいて忘れがちなのが「他の人のために役立つ」ということです。人のために自分を役立てることのできる人を「人徳のある人」と言いますが、その徳が備われば、最高に魅力ある人になることができます。
私たちが幸福を考えるとき、陥りやすい誤解がひとつあります。それは、自分が幸福になることばかりを考えて、幸福を追い求めていることです。
まず自分が幸福にならなければ、他の人の役に立つことができないと思われるかもしれませんが、そうではありません。自分だけの幸福は、この世の中では実現不可能なことなのです。
私たち人間は、1人で生きているのではありません。前にも述べたように、大自然のすべての恵みを受けて生かされているのです。そして、同じ人間である多くの人たちの有形無形の影響を受けながら、天の意思によって生かされているのです。
そのような存在であることが理解できれば、おのずと〝生かされている〟ことへの感謝と、喜びが生まれてきます。
喜びがあるということは、満たされた気持ちがあるということであり、満たされた気持ちがあるということは、不満がない、恨みがない、不安がないということです。
このような気持ちを持つ自分になることができれば、ごく自然な気持ちの発露として、他の人のために役立ちたいと思うようになってきます。
人間は本来、そのような気持ちを持って生まれているのですが、自我のほうが成長してしまい、自分のためばかりを思うようになったのです。
人のために役立つとは、他の人が真の幸福を取り戻すために役立つということです。それは具体的には、自分の喜びを他の人に分け与えるという行為となって表れます。もちろん、その行為には打算があっては意味がありません。見返りも何も求めず、ただ人を喜ばせてあげたいという純粋な気持ちで行うことです。
そして、その人の喜びを、自分の喜びとして本当に喜べることができたら、そのとき、初めて自分にとっての〝本当の幸福〟が実現するのです。
このような気持ちを、具体的な行動で表すことができると、人間として、〝最高の魅力〟を備えることができるのです。
さて、そのような気持ちを持つことができるでしょうか。自分中心で、何事も利害で考える人には、もちろん不可能です。自分の悩みで精いっぱいだから人のことなんか構っていられないという人にも無理でしょう。しかし、最初はそうであっても、これまでに述べたような自分の魅力が表れてくるうちに、そのような人ほど、「人を喜ばさずにはいられない人」に変わっていくのです。
それは、自分を覆っている殻が固くて厚い人ほど、その殻が破れたときに、内から表れてくる〝自分の魅力〟の素晴らしさを知ることになるからです。