人間としての〝本当の魅力〟が表に表れてくると、私たちにはいくつかの変化が見られるようになってきます。
その一つに「素直さ」があります。
魅力というものを考えるとき、真っ先に考えなければならないのが、この「素直さ」です。自分に素直でない、素直に自分の気持ちが表せないといったことは、日常生活でよくあることです。人によっては、素直でない表現、素直でない行動のほうが多いかもしれません。〝素直になる〟ということは、案外に難しいものなのでしょう。
私たちは、なぜ素直になれないのでしょうか。
その理由は、先に述べた自信喪失と深い関係がありますが、多くがコンプレックス(劣等感)にあります。自分が他の人より劣っていると思い込んでいる心理が、裏返しになって対人関係に表れてくるのです。
たとえば、親しくなりたいと思っている人に対して、自分から積極的に近づくことのできない人がいます。本人も、またまわりの人も消極的な性格だと思いがちですが、そうではありません。このようなタイプの人は、場合によっては自分に魅力がないと思い込んでいて、そのコンプレックスを相手に知られたくないという自己防衛の心理が働き、気持ちとは裏腹に自分の気持ちを押さえ込んでしまうのです。
また、誰に対してもすぐ批判したり、ケチをつけたり、悪口を言う人がいます。このタイプの人も、原因はコンプレックスにあります。自分の自信のなさを認めたくないために、人を見下げることで、その人より自分が上だと思い込もうとしているのです。
このように、コンプレックスが原因で、自分の気持ちを素直に表せず、人に対して反抗的であったり、ひねくれた考え方をしたり、また嫌われる行動をしてしまうケースは、あなたのまわりを見ても決して少なくないのではないでしょうか。
自分に素直になれず、他人に対しても素直になれない状態で生きている人はたくさんいます。とても損な生き方をしているのですが、実は、その人たちも、自分が素直でないことは十分に自覚している場合が多いのです。
コンプレックスというのは、心の中で複雑な変化をして、自分でもコンプレックスによるものだと自覚できないほど、巧妙かつ屈折した形で表面に表れてきます。そのため、素直な気持ちを表したいのだけれども、幾重にも重なった心理要因が妨害して、逆の言動をとらせてしまうのです。
「そんなつもりではなかったのに、つい嫌味を言ってしまった」とか、「自分を分かって欲しかったのに、また虚勢を張って嫌われた」といったことは、多かれ少なかれ誰にでもあることでしょう。
そのような言動をしてしまったとき、心の中に何か嫌な気持ちが生まれてきます。それは自分に対して不自然なことをしてしまったからです。そこで素直でない自分に対して、本当の自分がシグナルを送ってくれているのです。
そのシグナルに耳を傾け、本当の自分の観いのままに〝素直な自分〟を表現できたら、どのような人間に変わるでしょうか。
頑固にこびりついていたコンプレックスや、頭の中にいっぱい詰まっている〝こだわり〟がすべて消えてしまうと、まるでホースの出口を塞がれていた水が、その障害物がなくなったおかげで勢いよく飛び出してくるように、あなたの内から〝生命エネルギー〟がわいてきます。
その解放感から生まれる喜びの素晴らしさは、計り知れないものがあります。これまでなんと不自然で窮屈な生き方をしてきたのだろうと、きっと驚くに違いありません。そして、素直になれた自分がいかに魅力的であるかを実感することができるでしょう。
そうなると、周囲の人たちの見る目も接する態度もガラリと変わってきます。
あなたが寄っていかなくても、向こうからあなたと親しくなりたいと近づいてくる人が増えてくるでしょう。なぜなら、素直さが持つ力には人の気持ちをなごませ、人を喜ばせ、人を引きつける力があるからです。自然体の〝素直さ〟には、誰もかなわないのです。
そのような〝素直な自分〟に、人は誰でもなれるのです。
笑顔を忘れていませんか
そして、笑顔の絶えない魅力的な人になることができます。
楽しいときやうれしいときに、私たちの顔は自然に〝笑顔〟になります。何事もうまくいっている職場や家庭には〝笑い〟があります。そして、心がなごむ光景を目にすると〝微笑み〟が浮かんできます。
人の顔は、その時々の気持ちをそのままに表します。そして、その人が一番魅力的に見えるのは、なんと言っても、喜びに満ちた〝笑顔〟が表れているときです。このような笑顔を見せられたとき、人は誰でもその人に好感を覚え、そして気持ちがなごみます。笑顔は、自分の喜びだけではなく、他の人をも喜びに巻き込む力を持っているのです。
笑顔というのは、悲しいとき、つらいとき、あるいはストレスが溜まっているときには、そうたやすく浮かんでくるものではありません。それらのすべてから開放されたとき、本当の笑顔は浮かんでくるのです。
昨今、社会からこの〝笑顔〟が消えたということが問題視されているとも聞きます。競争社会の中で、いつも何かと競争することに追われ、仕事や家庭の問題で頭を悩まし、多くの人が精神的なゆとりをなくして、〝笑顔〟を忘れてしまっているのです。そして、逆に人を嘲笑する、都合の悪いことを笑いでごまかすといった、屈折した〝作り笑顔〟が横行している現状もあるのではないでしょうか。
笑顔を見せない人間、笑顔がわかない社会というのは、どう考えても不自然なことです。それだけ、世の中が複雑化して歪んでしまい、人も社会も、何か大切なものを置き忘れたまま、前へ前へと進んでいるようです。
魅力的な笑顔というのは、悩みや不幸を抱えた人、あるいは足ることを知らず常に何か満たしてくれるものを求めている人には、決して表れることはないでしょう。どんなに笑顔を見せようとしても、表情には無理が表れてきます。
逆に、喜びの観いが源いている人は、無意識のうちに自然に笑顔になっています。自分の内から魅力が表れてくるのです。
顔の表情には、その人の生きざまがそのまま表れてきます。いつもムッとした顔、眉間にしわが寄っている顔、くったくのない顔、微笑が絶えない顔──いつの間にか人それぞれに、その人なりの顔つきができ上がっていくのです。
さて、あなたは最近、喜びに満ちた〝笑顔〟を経験したことがあるでしょうか。自分の内から自然にわいてくる〝微笑み〟を感じたことがあるでしょうか。
笑顔には、いろんな効用があります。まず、ぎくしゃくしがちな人間関係を円滑にしてくれます。ストレスを開放させて視野を明るくしてくれます。身体の自己治癒力を高めて健康にしてくれます。そして何よりも、あなたを魅力的な人間にしてくれます。
このように、笑顔というのは、私たちが生きていく上でなくてはならない役割を果たしてくれるのです。その笑顔を忘れて、幸福というのは成り立ちはしないでしょう。
本当の笑顔は、あなたがすべてのものから開放され、素直で自然のままの自分になれたときに、あなたの内からわいてきます。そして、その笑顔は、あなたの観いが作る〝最高の笑顔〟となります。
このような笑顔を絶やさない毎日が実現したとすれば、あなたの人生はどのように変わってくるでしょうか。考えただけでもワクワクした気持ちになりませんか。
あなたは「喜びの表現体」として、この世に生を受けた1人の人間です。最高の笑顔になれる魅力は、いま現在、あなたの内に秘められているのです。