さて、三法行が人間本来の自然な姿を取り戻し、あなたの内にある素晴らしい力を引き出してくれる「行」であることはお分かりいただけたでしょうか。
三法行を始めると、個人差はあれ、知らず知らずのうちに身体中にエネルギーが満ちて、はつらつとした気分になってきます。身体の調子も良く、頭も冴えて、何をやってもうまくいくような気がして、毎日が楽しくて仕方がなくなってくるはずです。
そのような日々を繰り返していると、自分自身が、着実に良い方向に変わっている実感を味わうことができるようになります。そして、いつの間にか、日々の生活が充実してきていることに気づくようになるでしょう。
それだけではなく、なぜだか苦手だった仕事がうまくできたり、思わぬきっかけで魅力的な人と出会えたり、うれしい便りが届いたりといった、気持ちが踊るような楽しい出来事が身のまわりに起きてくるようになるでしょう。
これは、三法行の繰り返しによって、人間本来の姿を取り戻せてきたからです。
前にも述べましたが、人間は本来、喜びそのもの、健康そのものであり、そして繁栄そのものの存在なのです。その本来の姿に近づいていけるだけで、これだけの力がわいてくるのです。
〝不自然な人間〟を生きるか、自然の法則にそった〝自然な人間〟を生きるかの違いだけなのですが、現実の人生には、天と地の違いほど大きな差が表れるものです。
このように言っても、抽象的なイメージしか浮かばないかもしれません。そこで、現実に、あなたを変える力を、いくつかの例で紹介してみましょう。
右脳が開発され「感性」が豊かに
前にも述べたように、私たちは自分の内に〝幸福になれるすべての力〟を持っています。その力は、日常生活の中で必要に応じて、いろいろな形の力となって表れてきます。
その中から、「感性の力」を選んで、見ていくことにしましょう。
なぜ「感性」を取り上げるかといえば、昨今、「感性」に社会が注目しているからです。理論や理屈が優先されてきた社会の中で、人間性が喪失されてきた反省から、「感性」を活かすことの大切さが問われ始めています。そして、「感性のある人」が求められているのです。
そのあたりの背景も含めて、あなたが「感性の力」を発揮できるようになると、社会的に、どのような活躍ができるようになるのでしょうか。
今までの社会は、頭の良い人が優秀な人だという常識があり、官庁も企業も高学歴の人を優先して採用するという風潮がありました。
一般的に、頭が良いというのは、記憶力があり、論理的な思考ができ、頭の回転が早いことをいいます。いわゆる理性脳と呼ばれる〝左脳〟が優れている人のことです。
それに対して、感覚で物事をとらえる「感性」についての評価は、芸術家や職人を除いて、社会的には低い評価しかなされていませんでした。
ところが、左脳優先の社会では、創造性の発揮に限界があるということと、人間性が喪失されるという問題が生じて、近年では感性脳と呼ばれる「右脳」の力の重要性に目が向けられています。
右脳は、アイデア、ひらめき、想像力、直観といったイメージに関する力をつかさどっています。私たち現代人は、小学校のときからどちらかといえば左脳を重視した教育を受けてきたため、普段の生活においても左脳中心で物事を判断しがちです。「理屈に合わない」「根拠がない」といった考え方がそうです。
しかし、人間はもともと「感性」を中心にして生きてきたのです。
大自然の中で暮らしていた当時、目に映るものをあるがままに見て、あるがままに感じるという能力がなかったら、人間はとても生きていくことはできませんでした。そのため、感性が鋭く磨かれ、真理を感性で理解するという能力を身につけていったのです。
人間がもともと「感性」で判断し、感性で行動していたことは、身近な経験でも知ることができます。
「特に疑問はないけれど、何か嫌な予感がする」「理論的には正しいけれど、なぜか納得いかない」「その通りだと思うけれど、どうしてもその気になれない」といった気持ちになったときのことを思い出してみてください。
左脳の〝理性〟は正しいと判断しても、右脳の〝感性〟が納得しないと、あなたは行動しようとしないはずです。そして、あなた自身にとって、どちらが自然かというと、感性で判断したことのほうがはるかに自然に受け入れられるのではないでしょうか。
それは、人間がもともと「感性」優先で生きてきたことによる、ごく自然な判断だからです。
ところが、左脳優先の社会では、感性で判断することをとても嫌います。理屈に合わないことは間違っているという常識が、感性の判断を押さえ込んでしまうのです。そのため、目で確認できなければ、また理論・理屈で説明がつかなければ、頭から無視してしまうという誤った判断をするようになってきたのです。
また、現代社会が人間らしさを損なわせ、殺伐とした世の中になってきたのも、利害を計算して行動する人、知識を悪用してだます人、自分中心で他人を無視する人など、左脳中心ですべてを考える人が増えているからでしょう。
このように言うと、左脳がダメで、右脳が正しいと受け取られそうですが、そうではありません。
問題は、左脳偏重の考え方には弊害があるということであって、どちらも正しく活かすことが大切なのです。
人間の大脳が、右脳と左脳の2つで構成されているということは、天がこの2つの脳を使って智恵と力を出しなさいと言っているということにほかなりません。それが左脳中心になっているのは不自然なことで、人間本来の力を発揮することを阻んでいることになるのです。
三法行は、この右脳と左脳のバランスを取り、本来の機能を発揮させてくれます。
そうなると、人間本来の「感性」がよみがえります。本来の人間の感性は、人間味のある豊かな感受性、見えないものを見る直観、固定観念にとらわれない創造性などの力を持っています。それらの力が、日常生活の中で発揮されるようになるのです。
たとえば、直観が鋭くなると、工事現場の前を通るときに、理由はないのに「何かおかしい感じがする」と思って足を止めたら、突然、目の前に鉄骨が落ちてきたといったようなことが、現実に起きてくるかもしれません。目には見えないけれど、何らかの歪んだ波動が、あなたの感性に不協和音を響かせるのです。
また、人間本来の感受性が発揮されるようになると、人の喜びをわがことのように喜べる人間になることができ、また、自分の喜びを他の人に分け与えることが自然にできる人間になれます。感性豊かな人が、人間として魅力的なのは、このような人間らしさが身体の内から自然ににじみ出ているからです。
このように、人間本来の「感性」が表に表れてくると、人間的にも、また能力的にもいろいろな力が発揮できるようになります。
そうなると、人生が楽しくて仕方がなくなるのは当然ですし、またまわりの人も、あなたを放っておくわけがありません。その結果、仕事にも、人間関係にも、いろんなチャンスが増えてくることになるのです。