三法行は、本当の人間を取り戻す「行」であり、しかも生活の中で実践しながら、ごく自然に自分が変わっていくことができる「行」です。
学ぶために勉強する、上達をするために練習をするのとはまったく違います。「行」は、ただ行うこと自体に、行っている動作そのものに意味があるのです。
三法行は、般若天行を基に、これをただ唱え、ただ書きなぞり、そして座して自然の呼吸をただ繰り返すという3つの基本的な「行」からなる実に単純なものです。
しかし、その「行」を行っているときの動作、そのわずかな時間、そして、いま行っている自分自身がそこにいるということ自体に、大きな意味が含まれているのです。
この単純な「行」を繰り返し行うことで、自らの奥底から何らかの変化が現れてきます。それは、先に述べた「観い」が源くことによる変化です。その「観い」が源いている自分自身を、そして、その瞬間を全心身で感じることが三法行の真髄なのです。
「観い」とは、大自然の智恵であり、喜びのエネルギーです。その「観い」が源いてくるのを感じるということは、あなたの生命の波動を感じているということです。
つまり、三法行を行っているときの時間は、あなたが〝本当の自分とふれあっている〟ときなのです。それは、「生かされている私という人間は、こんなにも素晴らしい生命を持っていたのか」と、あなたが気づくことのできる一時です。
一日のほんのわずかな時間だけ、〝本当の自分〟とふれあう。このような日々が繰り返し続くと、あなたにどのような変化が起きるでしょうか。いままで漠然と過ごしてきた一日がとても新鮮に感じられ、少しずつ自分が変わっていくことに驚くに違いありません。
「行」というと特別な人のすることで、普通の生活をしている人には無関係だと思われてきました。しかし、天から与えられた智恵を、特定の人だけで独占されるということはあり得ません。誰にでも平等に与えられているのです。
ただ、誰もが日常生活の中で行える「行」がなかっただけなのです。
もし人間が天から与えられた智恵を忘れることがなければ、「行」は必要のないものだったのでしょう。もちろん、三法行も必要ありません。
ただ残念なことに、人間はせっかくの智恵を忘れ、本来の人間の姿さえも見失ってしまいがちです。だから、「行」という道具を使って、人間に与えられた智恵をよみがえらせ、本来の人間に戻る必要があるのです。
それをふだんの生活の中で、無理なく自由に行うことができ、しかも、その人に今必要な変化を起こしてくれるのが三法行なのです。
三法行は制約のない「行」
ここまでの説明で、三法行がどのような「行」であるかはお分かりいただけたでしょう。
そこで、具体的な実施方法について説明を加えていくことにしましょう。
三法行は、般若天行を「法唱」「法筆」「法座」の3つの方法で行います。いずれも、ふだんの生活の中で、あなたがしたいと思ったとき、またできる時間があるときに、自由に行うことができます。最小限の基本を除いて、こうしなければならないという規制はまったくありません。
また、信仰ではありませんから、拝む必要も、有難がる必要もまったくありません。かたくるしい作法や気構えをしたりする必要もありません。まったくの自然体で行うものです。
■「法唱」
般若天行のわずか276文字を、ただ唱えます。3回以上繰り返して唱えます。大きな声で唱えたいときは大きく、小さな声で唱えたいときは小さくて構いません。言葉の意味を考える必要はまったくありません。ただリズミカルに唱えるだけでよいのです。大切なことは、気持ちをリラックスさせて、初めはあなたのペースで自由に行うことです。
■「法筆」
法筆帳を使って般若天行の文字をなぞり書きします。ボールペンでも鉛筆でも構いません。文字もきれいに書く必要はまったくなく、音楽を聞きながらでも、子どもと話しながらでも構いません。わずか276文字を、気軽に落書きでもするような気分で書くだけでよいのです。
■「法座」
背筋をピンと伸ばして、両手のひらを上にして軽く膝の上に乗せます。右手のひらには天行力手帳を乗せます。そして、静かに目を閉じて、手のひらから息を吐き、手のひらから息を吸うように大きく深呼吸をします。
これを繰り返すと呼吸が整ってきます。その時、頭の中にいろんな雑念が浮かんできても気にすることはありません。ただ繰り返しているうちに、自然のリズムを感じるようになってきます。そのリズムを楽しむだけでよいのです。
以上の3つの方法を、毎日繰り返して行うのが三法行の実践法です。
あまりに簡単なので驚くかもしれませんが、「行」というのは簡単であればあるほど、その効果を発揮します。難しい理由は省きますが、単純であればあるほど「理」にかない「真理」に近づいていくのです。
肝心なことは、この3つの方法を、無理せずに、自分のペースで繰り返し行うことです。そうすれば、その動作そのものが心臓の鼓動に似たリズムになってきます。そして、自然のリズムに調和してくるようになります。
経験すると分かるのですが、不思議に心地よい気分になれ、何事にもこだわっていない素直な自分をそこに発見することができます。
それは、あなたの内に天行力が満ち、あなたの心身のすべてが正常化しようとしている証です。
それを実感しながら、繰り返し「観い」が源く毎日を繰り返していると、知らず知らずのうちに、あなたは、本来あるべき人間の姿、つまり〝本当の自分〟へと変わっていくことができます。
もう少し分かりやすく言うと、三法行によって、あなた自身に次のような変化が起きてきます。
まず、あなたの心と身体は、人間本来の理想的な姿へと向かっていきます。それは、健康になる、悩まなくてすむ自分になる、いまこの瞬間が喜びに満ちている自分になるということです。
次に、あなたの生活にリズムが生まれます。そのリズムにより、不思議と素直になれ、能力が発揮できるようになります。そうなると当然、人間関係も好転して、生活のすべてがうまく運ぶようになってきます。
さらには、プラスの発想ができるようになり、見えなかった人生の道が見えてくるようになります。そして、その道を、人間として歩んでいこうという勇気もわいてくるようになります。
あなたが望んでいた〝幸福〟とは、このような自分になれるということではないでしょうか。