ここまで「習慣」の影響力について述べてきましたが、いま、私たちが持っている習慣のすべては、私たちが生活の中で作ってきたものです。
そして、その思考・行動習慣の中に、私たち自身の可能性を阻害するマイナスの習慣がときとして含まれているため、努力のすべてが必ずしも〝自分を変える〟ことにつながっていかないのです。
たいていの人は、このマイナスの習慣に気づいたとき、それを何とか消そうとしますが、長年かかって作られた習慣を消すのは大変な努力を要します。
それよりも、自分自身を変えることのできるプラスの習慣を、新たに作ってしまうことのほうが、はるかに効果的です。
そのほうが大変だと思われるかもしれませんが、新しい習慣を作るということはそんなに難しいことではありません。
一例として、あなたの〝歯磨き〟の習慣が作られた経緯を思い出してください。
子どもの頃、あなたも、母親から「歯を磨きなさい」と叱られて、しぶしぶ歯を磨いた経験があるのではないでしょうか。何度もしつこく言われたおかげで、最初は面倒だと思っていたのが、そのうち朝起きると、自らすすんで歯を磨くようになります。そして、いつの間にか、気がついたら習慣化されていて、無意識に行うようになります。
その習慣が身体にしみついたため、今日まで何の努力の必要もなく、毎朝繰り返しできるようになったのです。
このように、最初はほんの小さな努力でも、何度か繰り返し行っているうちに習慣化の現象が現れて、意識して行っていたものが無意識にできるようになり、やがて、それをしないと調子が出ないというまでになるのが「習慣を作る」ということです。
その新しい習慣作りをどのようにして行うか。それが自分を変え、人生を変えるために必要な〝あなたの課題〟なのです。
「思い込み」はあなたの問題製造機
自分を知るためには、「習慣」の影響力を知ることが大切なのですが、もう一つには、「思い込み」に気づくことが必要です。
思い込みとは、「正しいと信じて疑わないこと」ですから、信念を持って行動するとか、確信を抱いて事にあたるといったときには、とても大切な役割を果たします。
ところが問題は、私たちの頭の中に根づいている「間違った思い込み」です。
間違った思い込みというのは、その軽重を問わなければ、誰でも日常茶飯事に経験していることです。それだけに、気軽に考えている人が多いようです。
しかし、「頭の中に根づいている思い込み」は、私たち自身に、そして私たちの人生に計り知れない影響を与えていきます。
間違った思い込みからは、勘違い、見誤り、誤解、偏見、誤信、先入観……といった問題が次々に派生して広がっていきます。そして、その問題からさらに複雑な問題が生まれ、あなたを悩ますことになります。
その意味では、間違った思い込みは、あなたの面倒な問題を作る製造機であると言ってもよいでしょう。
このような思い込みには、一つの大きな特徴があります。それは、何が思い込みなのかに自分では決して気づくことができないということです。なぜなら、「間違ったことを正しいと信じて疑わない」というのが、間違った思い込みの特徴だからです。それだけに、やっかいな問題なのですが、自分で自覚できないだけに、多くの人がその重大性に気づくことなく見逃してしまうのです。
さて、このような「間違った思い込み」の何が問題なのでしょうか。多くの人たちは何を間違って思い込んでいるのでしょうか。