現代人は、昔の人に比べると、かなり多忙な毎日を送っています。しかし、それだけ身体を動かし、人生を〝体験〟しているかというと、必ずしもそうではないでしょう。頭を動かすことばかりに忙しくて「行う」ことが伴っていないのではないでしょうか。
多くの人は、頭を動かし、頭で悩み、頭で人生を何とかしようと思っています。そうではなく、行動を起こさなければ、人生を変えることはできません。
このことは、とても大切なことです。
生きるということは、〝頭の中で描く人生を生きる〟ことではなく、現実の人生を「行う」ことです。「行う」ことの繰り返し、それが人生そのものなのです。
頭の中で喜びにあふれた理想の人生を夢見て、現実社会では苦の人生を歩む。──これはどう考えてもおかしいのですが、そのおかしさに気づくことなく、理想の人生と、現実の人生の違いを痛感しながら、2つの人生の両方を生きている人が実に多いのではないでしょうか。
このようなことになるのは、1にも2にも「行う」ことが不足していることに原因があります。
「これまで思うような人生を送ることができなかった」と思っている人は、まさにそのタイプに属すると言ってよいでしょう。
人生は「行う」ことの連続でしか成り立ちません。行動しなければ、仮想と現実の2つの人生は決して歩み寄ることはないのです。人生が思うようにならなかったのは、「自分が観うように行わなかった」ことに他ならないのです。
では、なぜ「行う」ことができなかったのでしょうか。
その原因は、あなたの頭の中にあります。
人は何をするにしても、まず頭の中で考え、納得してから初めて行動しようとします。しかし、頭というのは、考えれば考えるほど、否定的な結論を出してしまいます。
「本当にできるだろうか、失敗したらどうしよう、人はなんと言うだろうか、別にやらなくても、それに億劫だし──」
といった具合に、否定する方向へと自らを導いていきがちです。
そして結局は、「考えて、何もしない」「やってみたいけれど止めた」ということになってしまうケースが多くなるのです。
ところが、そうやって行動しなかったことに納得できればよいのですが、頭の中には、自分自身に対する不満がいつまでも残っていきます。そして、人生への不満へと変わっていくのです。
私たちは、もっと「行う」ことに関して目を向けるべきです。
そして、実際に「行う」べきです。
行わなければ何も変化は起こらないし、また進化も生まれないからです。頭で考えて学ぶことも、理解することもよいのですが、それが実践できなければ、また生活に活かせなければ、何もしないのと同じことになるのです。
たとえば、いま、とある人が不幸であるとします。その状況を、先がまったく見えない暗闇のトンネルの中にいるものと仮定しましょう。そのとき、その人が頭の中で、そのトンネルに入ったことを後悔しても、どうしようかと思案しても、ただ暗闇の中に立ち止まっているだけで、何の進展もありません。
このようなときには、何も考えずに、ただ足を前に出すことです。その先に何があるかは分からなくても一歩一歩、前に歩くことです。そうすれば、はるか向こうにわずかな光が見えてきます。
すると一瞬にして気持ちが明るくなり、不安も疲れも吹っ飛び、思わず駆けだしたくなるほどの喜びがわいてくるはずです。
不幸な状況を、トンネルの例で述べましたが、何事も出口のない人生はありません。行動すれば、必ず光は見えてくるのです。
私たちは人生を受け身で考えるのではなく、自分の人生を「自分の観い」で歩くことをもっと真剣に考えるべきです。
なぜなら、その繰り返しを「ただ行う」ことこそが、あなたを幸福に導く唯一の方法だからです。