これまでに、三法行は、不自然な自分を正して、人間本来の姿に戻れる「行」であることを説明しました。それは、「自然の法則」に沿った生き方ができる自分になれるということです。
「自然の法則」は、繰り返しのリズムそのものと言えます。そのリズムに調和したとき、私たち人間は、最高の喜びに輝くことができます。
ふだん、私たちはリズムについてあまり深く考えることはありませんが、自然が刻むリズムには、とても大切な意味が含まれています。
そこで、三法行の真髄をより深く理解していただくために、自然の法則とリズムについて説明をしていきます。
私たち人間は、「自然の法則」によってつかさどられています。人間だけではなく、私たちが生かされている地球も、その地球を包む大宇宙も、この世のすべてのものは「自然の法則」に基づいて、いっさいの狂いなく運行されています。
これまでに、三法行はただ繰り返すことが大切だと述べましたが、それは、自然の法則に沿った行いをすれば、しだいに人間は歪みを直すことができ、人間本来の姿に戻ることができるからです。
さて、ここで注目していただきたいことがひとつあります。それは、「ただの繰り返しはリズムを生む」ということです。
何かをするときに、そのことに期待するとか、意味を求めるとか、こだわりを持つといった気持ちをいっさい捨てて、まったく白紙の気持ちで同じことを「ただ繰り返して」いると、自然なリズムが生まれてきます。
三法行で行う「法唱」も「法筆」も「法座」も、ただ繰り返しているうちに、自然に自分にとって一番やりやすいリズムで行うようになってきます。
リズムとは、もともとただ繰り返すことを言うのですが、その繰り返しが、さらに自分に合った好ましいリズムを生むのです。そして、その〝リズムに乗る〟ことが、自然の法則に沿った行いなのです。
そうすると、自らの奥底から「観い」が源いてきて、何ともいえない心地よさと、身体中にエネルギーがみなぎる自分を感じることができるのです。
なぜ、ここで「リズム」に注目していただきたいかというと、私たち人間は、自然の法則によって生かされているからです。
そして、この「リズム」こそが、私たち人間の生活を支える大きな力になっているからです。今日、人類が存在するのは、自然の営みの繰り返しそのものと言える「リズム」の大いなる恩恵を受けているからにほかなりません。
私たちの生命をつかさどる宇宙は、無数のリズムが奏でるハーモニー(調和)によって成り立っています。その中で人間は生命を授かり、そして生かされているのです。言い換えれば、人間は、この大宇宙のリズムに調和すべく誕生し、進化してきたのです。
あなたは、勇壮なリズムの音楽を聞くと気持ちが奮い立ち、安らかなリズムの音楽を聞くと気持ちが安らぎ、テンポのよい音楽を聞くと、なぜか身体が動きだすようなことはありませんか。そんなとき、いったいなぜだろうと疑問に思ったことはありませんか。
なぜ、リズムに反応するかというと、それは、宇宙の進化のリズムと、生命の進化のリズムが、記憶として、私たちの内に内在しているからなのです。
宇宙はリズムによって動いている
いまから150億年前、ある大いなる意思の力によってビッグバンが起き、「無」から空間と時間が生まれ、あらゆる物質の元である素粒子が生まれました。同時に、素粒子の繰り返しの変化により、エネルギーが生まれ光が生まれました。
それから、進化の繰り返しを、ただただ気の遠くなるほど繰り返した結果、銀河系が創られ、地球を含む太陽系が創られました。
そして、さらなる繰り返しを経て、いまから35億年前、この地球上に生命が誕生したとされています。私たちが生きている宇宙の誕生を、簡単に説明するとこのようになります。
こうして出現した大宇宙は、無数の天体がそれぞれにエネルギー波動を発しながら、相互に影響しあい、壮大なリズムを奏でながら、いまなお進化を続けているのです。
地球はこの大宇宙のすべての影響を受けながら、24時間のリズムで自転し、1年365日のリズムで太陽を1周し続けています。
地球に住む人間に対して、最も大きな影響を与えているとされる太陽は、その膨大なエネルギーを地球に送り続けています。その量は、地表1平方メートルあたりで換算すると、100ワットの電球七個分を点灯する電力に相当するそうです。
地球上のすべての生命は、その太陽エネルギーの、昼と夜、四季、太陽黒点の活動サイクルなどの繰り返しの変化に大きな影響を受けて生きているのです。
たとえば、ウミネコは、2月の下旬に北から南の日本にやってきて、産卵と子育てを終えたあと、7月になると一斉に北へと帰っていきます。この太陽の軌道の変化を追う旅を半年間のリズムで、何世代にも渡って繰り返し行っているのです。
また、タンポポの花は朝8時頃に花を開き始め、昼頃までいっぱいに花びらを開いて太陽の光を浴びようとします。そして午後2時を過ぎると花を閉じてしまいます。このリズムを正しく繰り返しながら、太陽エネルギーを吸収して、次世代へと生命をつなぐ種子を育てているのです。
地球を回る月も同じように、地球上の生命に大きな影響を与えています。
ニッポンウミシダは、1年に1度、10月に上弦の月か下弦の月になった日の午後3時前から4時の間に卵子と精子を一斉に放出します。時計もカレンダーも持たない植物が、見事なまでの正確さで月の動きに合わせて、その生命を何世代も生きているのです。
月との関係でよく知られているのが月経です。月経のリズムは平均29日半ですが、これは月齢の29日半とまったく同じリズムなのです。
このような例を挙げるときりがありませんが、ここで挙げた例だけでも、太陽の活動、月の運行、地球の自転と公転といったリズムに、さらに星座やもっと遠くの天体の間接的な影響も含めて、全宇宙の無数の活動リズムに影響されて、この地球上の生命が生かされていることが分かります。
そもそも人間は、宇宙創造の始めから、気の遠くなるほど繰り返されてきたリズムの波の間から生まれた存在です。したがって、宇宙の壮大なリズムに影響されているのは当然のことなのです。
さて、この驚くべき大宇宙と人間の相関関係は、決して偶然で片づけられるものではありません。なぜなら、宇宙の大いなる意思である天が、最初から人間を、「自然の法則」に沿って生きるべく設計図を描いて、その通りにこの地球上に誕生させたからです。
ここで「自然の法則」に沿って生きることの大切さを繰り返し述べているのは、それが天の意であり、また「自然の法則」によってのみ人間は生かされ、その生命を本当に輝かせる存在になることができるからです。