これまで述べてきたように、私たち人間は誰しも、自分の内に素晴らしい生命エネルギーを持っています。
その力を心身いっぱいに表現できる自分になること、つまり「人間本来の姿」を取り戻すことが、幸福になるための唯一の道であることは、もうお分かりいただけたと思います。
そして、多くの人々が幸福になろうと実施している衆知の方法だけでは、真に幸福になることは困難であることも述べてきました。
ここで、悩みを解決する対処療法ではなく、自らの生命エネルギーを存分に引き出し、すべての悩みを必要としなくてもすむ自分に成るという、既存の方法とはまったく次元の違う方法があります。
それを「三法行」と言います。
三法行とは、不自然な自分を正して〝人間本来の姿〟に帰ることができる「行」です。
悩みを生み出すいまの自分、人生に迷ういまの自分を取り除いていき、喜びそのものである本来の自分を引き出していくことができる方法です。
このように言うと、何か難しい修行のようだとか、悟りを開く方法ではないかと思われるかもしれませんが、そうではありません。
方法そのものは実に単純で、普段の生活の中で気軽に行うことができ、しかも人生を現実に好転させていく実践そのものの「行」なのです。
宗教によっては、悟りを開くために山に篭もって難行苦行を行います。日常生活の場を離れて、自分を極限まで追いつめ苦しめることで悟ろうという修行です。
自らを苦しめて、そこから幸福を導き出せるはずがありません。また仮にできたとしても、一般の人々には不可能なものであり、また意味をなすことはきわめて困難なものです。
三法行にも「行」という文字があるので、似たような修行方法だと思う人もいるかもしれませんが、三法行はそのような行とは、あきらかに一線を画したものです。それを行うことが苦であったり、努力を必要としたりするものではなく、その対局にある〝喜びが源く行〟なのです。
以下、三法行について説明をしていくことにしましょう。
すべてを生かすエネルギーの存在に気づこう
三法行は「天行力三法行」とも呼ばれ、その名称にある「天行力」とは、この宇宙大自然にあまねく存在するエネルギーのことです。
私たちが生きている地球も含めて、この大宇宙はすべてあるエネルギーによって創造されています。
夜空に浮かぶ無数の星も、私たちの足元に転がっている小さな石も、海も山も、そして動物や植物も、すべてまったく同じエネルギーによって創られ、生かされています。
もちろん、人類もまたこのエネルギーによって誕生した生命のひとつです。
もし、このエネルギーが消滅したと仮定すれば、それは電池の切れた腕時計のようなもので、私たち人間はたった1人として生きてはいけません。なぜなら、毎日食べている食物も、水も空気も、すべてこの世にあるものは、何もかもエネルギーの産物だからです。
私たちは「天の恵みを受ける」という言葉をよく使いますが、このエネルギーは、さまざまに形を変えて、私たち人間の生命を生かしてくれているのです。
身近なたとえを挙げれば、たったにぎりこぶしほどの大きさしかない心臓が、休むことなく鼓動を打ち続けているおかげで、私たちの体にはたえず血液が循環し、日々を生きていくことができますが、この鼓動こそ、天行力によるものなのです。
このエネルギーは、私たちが生きている天と地の間に満ち満ちています。そして、地球上のすべての生命は、このエネルギーを取り入れることによって生命を維持し、活性化させているのです。そのため、このエネルギーは生命活性エネルギーとも呼ばれています。
「天行力」とは、この天と地の間で働いているエネルギーのことを称しています。
よく霊力などといった不可思議な力のことが話題になりますが、そのようなものではありません。私たち人間の〝生命の根源〟になっているエネルギーなのです。
人間の生命エネルギーが、この天行力と同調し、共鳴することで、その生命は活性化されていきます。
ですから、私たち人間が、この天行力をたくさん受けて、それを取り入れることができれば、それだけ生命が活性化され、不思議と素直になれ、〝人間として生きよう〟〝人間として伸びよう〟と、私たちの身体の奥底から、意識層に働きかけてくるのです。
この天行力は、私たちの内で「観い」を源かせる力になります。「観い」についてはのちほど説明しますが、ここではまず「天行力」の働きについて知っていただきたいと思います。
さて、これまでに述べたように、まるで奇跡のような力が発揮できた、なぜだか温かい気持ちになれるといった現象が起きるのは、自分の生命が、天行力を多く取り入れることで生き生きしていたからです。
この天行力を、いま以上に享受することができれば、私たち人間は、心も身体も、もちろん頭も生き生きと働き、「最高だ」と思える状態で毎日を暮らすことができます。
「心が温かくて、誰にでも親切にしたい。身体が絶好調でじっとしているのがもったいない。頭の中が意欲満々で何でもやりたい、何でもできそうだ」
そんな自分に〝成る〟ことができたら、そして、その状態が毎日続いたら、これはもう〝最高〟という以外に表現する言葉がありません。それまでの自分がウソのように思え、悩んでいたことのすべてが些細なことに思え、いま生きているこの瞬間が「最高に幸せだ」と思えることでしょう。
想像してみてください。もし、このような状態が毎日繰り返し続いて、気がつけばあなたが驚くほどに変わっていると、あなたの人生には思いもよらなかったほどの素晴らしいことさえ起きてきます。
自分が変わる、人生が変わるということは、このような状態のことをいうのです。あなたが望んでいる自分の姿、人生の理想は、まさに、このような自分を実現することではないでしょうか。