以前のことですが、マンションの6階から落ちた子どもを、近所の奥さんが下で受けとめて救ったという事件がありました。
「なんでこんなことができたのか、自分でもまったくわかりません」
これが子どもを救った主婦の言葉です。
数十メートルも離れた場所にいた主婦が、子どもが落ちたという瞬間に走り出し、子どもを抱きとめる。子どもが落ちるスピードを考えると、この主婦はオリンピックの100メートル走選手以上のスピードで走ったことになるというのです。
こうしたパワーを「火事場のバカ力」といいますが、このように、とっさの判断で信じられない力が出た、驚くほどの知恵が出たという話はたくさんあります。
そしてこの主婦のように、「よくあんなことができたものだ」と自分でも驚くほどのことができているのです。
それは、先にも述べたように、その瞬間、頭が空っぽになり、それまで閉じ込められていたエネルギーの一部が表に表れて、その人にそうさせたのです。
体験した人も、その話を聞いた人も、不思議だ、奇跡だと思ってしまいますが、その不思議も奇跡も、その人の内から出た力にすぎません。普段どんなに頑張っても不可能なことが、いくつかの条件が重なったことにより、偶然に発揮されただけなのです。
しかも、人間にはこうした力があることは、医学的にも解明された事実なのです。
人間の内にある生命エネルギーが表に表れるのは、このような特殊なケースだけではありません。普段の生活の中でも、いろんな形で表れています。
ただ、水道の蛇口から水滴がポツンと落ちるような、ほんのわずかな発露なので、それが何だかわからないだけなのです。
日向ぼっこをしているとき、ついウトウトとしている瞬間に、なんとも言えない心地よさを感じることがあります。
恋をしているとき、なぜか自分がとても素敵に見えるときがあります。
夢が実現できたとき、身体がじっとしていられないほどの喜びを感じることがあります。
このように、なぜか不思議な心地よさ、身体の内からわいてくる温かさや喜びは、いったいどこからやってくるのでしょうか。自分で意識してそんな気持ちになれるはずがありません。何らかの刺激がキッカケになって、あなたの奥底からわき上がった何かが、あなたの気持ちをそうさせたのです。
その「何か」とは、あなたの内にある〝あなたの生命〟そのものの心地よさ、温かさ、喜びが発露したものなのです。それ以外の何者でもありません。
このように、あなたの心や身体を動かす、すべての源になっているのが生命エネルギーの力なのです。
多くの人は、このような素晴らしい生命エネルギーを、現実の世界、つまり自分が意識する世界に目を奪われて、それゆえに無意識のうちに封じ込めてしまいます。
ただ、それでも、あなたの生命エネルギーは、たった一秒も休むことなく、あなたに働きかけています。
ここでちょっと、自分の手を胸に当て、あなたの心臓の音を聞き、感じてみてください。それはただの機械的な音でしょうか。決してそうではないはずです。その音は、あなたの生命エネルギーが心臓を通して、いまのあなたに語りかけている真実の音、生命の音です。
このように、絶えることなくわき続けている素晴らしい力を、存分に活用することができたら、あなたの人生は、あなたの観うがままになることは間違いないのです。