まえがき

命か、それともお金か。

私たち人類にこの究極の選択をもたらしたのは、目にも見えないごく微細な存在であるウイルスでした。

この極小存在がもたらした異常事態は一向に収束の気配を見せず、自粛をともなう「命優先」の生活か、それとも経済活動に重きを置く「お金優先」の生活か、施策をめぐっては国をあげて揺れ動いてきました。

また、遠くない将来に感染問題の終息を迎えたとしても、のちに新たなウイルスが発生し再び人々を混乱に陥れることは容易に想定されると、識者らも口々に述べています。

このような岐路に立たされた社会で、私たち人間が真に人間らしく、確かな生きがいを携えて生きていくためにはどうすればいいのか。社会のあり方や個人の幸せについてあらゆる議論がなされ、社会基盤の抜本的な変革を望む声が尽きません。

この解決のために、WHO(世界保健機構)を始めとして世界の医療機関が知恵を絞り対策をたて、また各国首脳間で連携をとりながら解決策を模索し、わが国でもあらゆるメディアで専門家や評論家が登場しては議論を重ねていますが、それも暗中模索の域を脱することができません。

「そんなことをやってる場合じゃないだろう」──誰もが持っている本音です。

もっと深刻な問題はすでに起きています。あらゆる分野で他国から評価の高いわが国で、若者の死因1位が自殺だという現実は、ともすればウイルス問題をしのぐ深刻な事態と言えます。

将来ある若者ですら未来に希望を抱けないこの閉塞感を打破する決め手はないのか。

ウイルス問題だけがことさらクローズアップされる昨今において、もっと根深い問題が私たち人間には横たわっていたことを忘れてはなりません。前著『人間のしくみ』発刊後、私どもに寄せられる声をうかがうたびに、経済的に申し分ない暮らしができていながらなぜか深い悩みを抱えて暗い日々を送っている人や、誰もが羨むような肩書きを持っていても人には言えない家庭の問題に頭を抱えている人も決して少なくありません。

これほどまでに恵まれた暮らしをしているのに悩みが尽きず、不平不満さえ口にする人々に、まさに世知辛い現代を生きる人々の「ナマの姿」をこれでもかというほど見せつけられます。

いまこそ私たちは、目に見えるもの、耳に聞こえるものだけに心を奪われるのではなく、人間としてもっと本質的な領域に目を向けなければなりません。

この世のあらゆる問題には、必ず解決策というものが存在します。健康問題、自然災害、経済危機から個人の悩みに至るまで、すべて解決策はあるのです。

そして、その解決のカギはあなた自身が握っているのです。

本書を通じて、そのことを確かにつかんでいただけたら幸いです。